研究概要 |
ミトコノドリア内には核とは別に独自のDNA(mtDNA)が存在することことが知られている.運動は身体の酸化的能力を高いレベルを維持,亢進することが知られており,mtDNAの変異の蓄積を抑制できる可能性を示唆している.そこで本研究は,ラットにおいて高齢期に相当する22カ月齢より持久的走行トレーニングを開始し,加齢に伴う骨格筋mtDNAの突然変異の蓄積にどのような影響を及ぼすのかについて明らかにすることを目的とした. 【方法】被検動物にはWistar系雄性ラット(3,22カ月齢)を用い,コントロール群とトレーニング群に分類した.トレーニングは走行トレーニング(30m/min;10週齢のみ,20m/min)を1日60分,週5日,10週間行った.被検筋にはヒラメ筋と足底筋を用いた.両筋から総DNAを抽出し,nested PCR法を用いて加齢に伴って特に多く蓄積されるとされる4,834bpの欠失(common deletion)を有するmtDNAを持った個体数,および各個体に存在したその他の突然変異数を算出し,評価を行った.また,特徴的な2つの結果に対しては塩基配列を決定し,確認を行った. 【結果および考察】common de1etionは若齢群ではヒラメ筋,足底筋ともに29匹中2匹に存在したのみであったのに対し,高齢群では16匹中ヒラメ筋で9匹,足底筋で15匹に存在した.従って,ラットの骨格筋においても加齢に伴いmtDNAの突然変異が蓄積していることが明らかとなった.しかしながらトレーニングによる影響はほとんど見られなかった.各個体に存在していた突然変異数においても同様な結果を示し,トレーニングによる影響は見られなかった.これらの結果は,本研究で用いた度,開始時期の運動トレーニングはmtDNAの突然変異の蓄積には関与しない可能性を示唆している.
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