研究概要 |
近代ドイツ・スポーツ史の術語学的基礎研究として、今回は「運動」、「訓練」、「達成」を中心に検討した。 ドイツ・スポーツ史の「近代」の先駆者として、一般にグーツムーツとヤーンを挙げることができるが、筆者は、これまでもこの両者に関する研究を続けてきた。最近は、ノンバーバルな世界と言われる体育やスポーツの領域の言葉化(学問化、科学化)に関心を抱き、近代体育の古典と祢せられるグーツムーツとヤーンの著書を注目してきた。特にヤーンは、術語に関してかなり詳細な論述を試み、ドイツ・スポーツ史における術語研究の原点になっている。ドイツ語圏から、体育やスポーツにおける学問的研究が沢山排出された所以である。 そこで今回の報告書には、術語研究の原点になっているヤーンの主著といわれる"Die deutsche Turnkunst"(1816)の試訳を掲載することにした。グーツムーツの主著『青少年の体育』は、すでに邦訳書が出版されているが、ヤーンの邦訳は今のところ公刊されていない。したがって、この試訳は学術的に意味のある試みである。これはヤーンと弟子のアイゼレンによって書かれたが、両者の分担については研究者によって若干意見が異なっている。しかし、序論と第4章はヤーンによるという点ではほぼ一致している。序論では術語研究の原点になった部分が含まれているし、第4章では4Fとして有名な「新鮮、自由、喜び、敬虔(Frisch,Frei,Froelich,Fromm)」が語られる。
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