研究概要 |
本研究は,エクセントリック運動による筋損傷のモデルを確立し、筋機能および他の筋損傷の指標の変化、特に骨格筋収縮・構造蛋白質の血液中濃度の経時的変化を明らかにすることを目的として2年間にわたって行われた。上腕屈筋群のエクセントリック運動のモデルには改良を加え,運動中の筋力発揮を正確にモニター・記録することができるようになり,損傷を引き起こす条件についても詳細に検討され,Bモード超音波画像を用いて損傷の程度を定量化する方法も確立できた。その成果は、2編の論文として発行された他、5編の論文が現在印刷中となっている。また,これまで用いてきた筋損傷の間接的指標間の相互関係についても明らかにでき,血漿クレアチンキナーゼ(CK)活性値の運動後のピーク値は筋力の低下度や回復率,筋の腫脹,関節可動域とも高い相関関係を示すが,筋肉痛の程度とは有意な相関関係が認められないことが確認できた。CKのピーク値は血液中の他の酵素活性(LDH:乳酸脱水素酵素,AST:グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ)やミオグロビンのピーク値とも有意な相関関係にあり,MRIやBモード超音波画像で捉えられた損傷度とも有意な高い相関関係を示すことが明らかにできた。これらについては論文にまとめ、Medicine and Science in Sports and ExerciseとInternational Journal of Sports Medicineに投稿し、現在審査を受けている。さらに、筋損傷に伴う血液中の酵素活性の変化については、論文に掲載済みである。しかし,CKやミオグロビン以上に筋損傷をダイレクトに反映すると考えられる骨格筋構造蛋白質(ミオシン軽鎖,トロポニンTおよびI)や細胞骨格蛋白質(デスミン、ジストロフィンなど)の血液中濃度を,骨格筋由来のミオシン軽鎖,トロポニンTおよびIのモノクローナル抗体を用い,エンザイムイムノアッセイ(ELISA)によって測定しようと試みたが,抗体の特性のためか,信頼性が高いデータが得られるには至っておらず、現在も引き続き検討中である。
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