研究概要 |
1.研究目的:ヒト2型糖尿病に腎症を合併したモデルOLETFラットを用いて,糖・脂質代謝および腎の機能的・組織形態学的所見により運動療法と食事療法の影響を比較する。 2.研究方法:OLETFラット32匹(OLETF-Pre,n=8;OLETF-Sed,n=8)および正常対照雄性LETOラット14匹(LETO-Pre,n=6;LETO-Sed,n=8)を用い,21および32週齢時にブドウ糖経口負荷試験(OGTT)を実施し,22〜31週齢までの10週間運動または食事療法を行った。療法期間中体重,血圧,尿中クレアチニン,アルブミン(Ualb),NAG(UNAG)および総蛋白排泄量(UTP)を測定した。運動療法には回転ケージによる自発運動を用い、食事療法では運動療法群の体重と同じになるように給餌量を制限した。療法前後のOGTT終了3〜4日後に全血液量採取による屠殺後各臓器,体脂肪および各筋重量秤量した。血液検体を用い空腹時血糖,IRI,血清フルクトサミン,TC,HDL-C,TG,EC濃度およびLCAT活性などを測定した。 3.研究結果:(1)Ex群のUalb,UNAGおよびUTPはDiet群より有意に高く,Sed群よりは有意に低い値で推移した。(2)各療法期間中の体重変化にはExとDiet群間にまったく差異はなかったが,Sed群に比較し有意な低値であった。また,Ex群の血圧はDiet,SedおよびLETO-Sed群に比較し高値傾向であった。(3)各療法終了後のExおよびDiet群の糖認容能はSed群に比較し有意に改善したが,Ex,Diet群間ではまったく差はなかった。(4)Sed群に比較し療法後のExおよびDiet群の体重当たり体脂肪量が少なく筋重量は多かったが,Ex,Diet2群間に差はなかった。Ex群のTC,HDL-C,LDL-C,ECおよびLCAT活性はDietおよびSed群に比較し有意な低値であった。血清TG濃度にはEx,Diet2群間には差はなかったが,これらの群の値はSed群に比較し有意な低値であった。(5)ExおよびSed群の腎重量はDiet群に比較し有意な高値であった。Sed群のA^^-(G)およびV^^-(G)はEx,Diet群に比較し有意な高値であり,Ex,Diet間の比較ではEx群が高値傾向を示した。GBA厚には3群間に有意差はなかったが,Sed群が高値傾向を示した。 4.結論:運動および食事療法にはDN進展抑制効果があるが,運動療法の効果は少なく,運動によるDN進展促進と運動を介した糖・脂質代謝改善によるDN進展抑制効果が相殺され,結果的には食事療法の効果には及ばなかった。しかし,ヒト糖尿病患者では骨や骨格筋などの廃用性萎縮防止およびQOLの維持という点からも日常生活における運動は必須であり,血圧上昇および腎症進展を惹起しない運動処方の作成が必要と思われる。
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