研究概要 |
運動トレーニングが感染に対して抵抗力を高めるものか否かを検討した。披検動物は5〜7週齢の雄性マウスである。運動は水泳を用い,水温は36℃とした。運動の影響は一過性の運動,習慣化した運動(トレーニング)について検討した。 1.一過性の運動は,15分,30分,60分,90分を用い,運動負荷終了直後,30分後,1時間後,3時間後,6時間後,12時間後に大腸菌を腹腔に注入し,感染に対する抵抗力をみた。その結果,運動時間の長短に関わらず,運動後1時間はマウスの生存率が統計的に有意に高かった。しかし時間の経過とともに対照群との差はなくなった。 2.習慣化した運動(トレーニング)は,運動の種類は水泳,1回の負荷時間は1時間,週5回の頻度で1,2,3,4,6,8,12週間実施した。その結果,生存数はトレーニング群の方が対照群より多かった。統計的に有意な差がみられたのは2,4,12週間群であった。 3.(1),(2)で得られた成績から,2週間の水泳運動を負荷し,その際の血中の免疫細胞を測定した。測定項目は総白血球数,リンパ球,顆粒球,単球,およびリンパ球サブセット(CD3,CD4,CD8,CD19)である。総白血球数は対照群,浸水群に比べ水泳トレーニング群は有意に高い数値を示した。白血球の分画をみると,顆粒球の相対値が有意に高かったが,リンパ球,単球に変化はみられなかった。リンパ球のサブセットにも変動はみられなかった。 以上の成績から,一過性の運動,習慣化した運動は生体の防御能を賦活させることが示唆され,その背景にある機構として血中の顆粒球がなんらかの形で関わっていることが推察された。
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