研究概要 |
目的:本研究では、発汗による微量元素の消失の程度を明らかにするため,サウナ入浴時における全身法とアームバック法の比較,運動時の汗中微量元素濃度の季節差について検討した。 方法:サウナ入浴実験は乾式サウナ入浴実験(60℃、30分間)を行い,汗は全身法とアームバック法により採集した。運動実験は心拍数を140拍/分に規定した1時間の自転車エルゴメーター運動を夏季と冬季に行い,汗は非利き腕に取り付けたアームバックにより採集した。 結果:サウナ入浴実験,運動実験共に,Zn濃度が最も高値であり,以下Cu,Fe,Ni,Mn,Crであり,発汗により微量元素が損失することが認められた。サウナ入浴実験において,微量元素濃度はアームバック法よりも全身法で高い傾向にあり,いずれの元素においても明らかな関連性が認められなかった。全身法では皮膚からの混入,汗の蒸発による濃縮の可能性が考えられる。運動実験において,汗中微量元素濃度は,すべての元素で夏季よりも冬季で高い傾向にあり,CuとMnにおいては有意(p<0.05)に高値を示した。一方,汗による微量元素の消失量については,いずれの元素濃度も夏季より冬季で高い傾向にあるにもかかわらず,夏季と冬季の間に明らかな差異が認められなかった。これは,夏季の発汗量が冬季に比べて約1.7倍高値をしめしたことによる。 多量に発汗するスポーツ選手は,特に冬季の多量の発汗時には著しい微量元素の消失が予測される。したがって,スポーツ選手の微量元素欠乏症は発汗による微量元素の消失が誘因となると考えられる。
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