研究概要 |
本研究は、筋活動に伴う筋形状の変化が筋循環に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。そのため、足関節角度90度と110度の位置において、強度の異なる静的足底屈運動を30秒間行わせ、腓腹筋内側頭と外側頭の筋束長の変化を測定した(超音波法)。また、別の日に同じ運動時の筋酸素動態(近赤外分光法)と大腿動脈血流量(超音波ドップラー法)を測定した。被験者は健康な体育専攻の女子学生9名であった。筋活動強度を10,30,50,70%MVCと変化させると、足関節角度に拘わらず筋束長は短縮し、その値は関節角度110度の方が常に低かった。この運動での大腿動脈平均血流速度及び単位時間あたり血流量は、運動中はどの強度でも足関節角度110度の方が高く、逆に運動終了直後は110度の方が低かった。すなわち、110度の方が運動中の血液供給が高く、運動後の血流増加が抑制されたと考えられる。しかし、足関節角度による血流量の相違は統計的に有意に至らなかった。足関節最大トルクは関節角度90度では129.1±22.5Nmであったが、110度では有意に低く78.3±13.8Nmであった筋束の発揮した張力を推定すると両関節角度間に有意差が認められなかった。したがって、相対的強度が同じであれば筋線維の発揮する張力に両関節角度間に有意差がなくなり、両角度での血流量の差は筋循環に対する張力の影響を除外した筋線維長の影響とみることができる。すなわち、筋束長の短い110度の方が血流量が大きい傾向にあることが示唆された。腓腹筋の組織酸素動態は2関節角度間に有意差はなかった。動的運動では筋束の短縮がさらに顕著になるが、張力変化も大きく、筋形状の影響よりも筋の張力のon-offによる血液循環の変動が大きかった。結論として、筋循環は筋束長が短縮した状態にある方が高い傾向を示すことが明らかとなった。
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