研究概要 |
消化機能の維持・増進を目的とした運動処方の確立のために,膵外分泌と運動習慣について検討した.(1)平成10〜11年度には運動量と膵外分泌機能の関係を明らかにするために自発走トレーニングについて検討し,(2)平成12〜13年度は運動習慣による膵外分泌機能亢進の機構を明らかにするために消化管ホルモンであるCCKの阻害剤であるCR1505の影響を検討した. (1)(2)とも,F344雌ラット5週齢を用いた.自発走トレーニングは回転車輪式装置を用いた結果,一日平均走行距離は5.2kmであった.強制走トレーニングは(1)(2)とも35m/分,60分走を週に5回実施した.CR1505は10mg/kg体重を週に5日投与した.各実験内で各群の摂餌量を一致させ,介入は8週間実施した.膵重量,膵蛋白含量,消化酵素活性,膵腺房細胞の電顕写真の解析((2)のみ),DM含量((2)のみ)を解析した. 実験(1)自発走トレーニングは強制走トレーニングに比較して,運動強度は低く,総運動時間や走行距離が多いことが特徴であり,強制走トレーニングよりも膵外分泌機能が向上する傾向があった.膵重量・膵蛋白含量・膵消化酵素活性は,総走行距離の延長に伴って増大する傾向が観察された.従って,膵外分泌機能の向上には運動強度よりも総運動量の増加が有効であることが示唆された.消化機能の維持・亢進には低-中等度運動を総運動量が多くなるように習慣化することが望ましいと思われる. 実験(2)トレーニングによる膵重量の増加は,DM含量の結果から腺房細胞の増殖ではなく肥大によることが判明した.この現象はCR1505投与によって消失し,運動習慣による膵肥大にはCCKがmediatorとなっていた.また,膵蛋白の増加は酵素の増加によることも電顕写真により判明し,これはCR1505投与ラットでも認められ,運動習慣による膵外分泌亢進へのCCK以外の関与の可能性も示唆された.
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