研究概要 |
今日の中山間地域は最寄りの都市との結びつきをさまざまな面で強めている。それゆえ,これら地域の振興方策を考える際にも,地方中小都市圏の単位で地域構造の分析を行うことが強く求められる。本研究ではこのような問題意識に立って,全国的な視野をふまえながらも,主に広島県の中山間地域を対象とした実態調査を行い,以下の結果を得た。 1)中山間地域研究の動向のレビューを行い,地方中小都市との関連で中山間地域を捉えることの意義を確認した。 2)広島市に近接する山村地域を事例としてその経済的な変化を考察し,広島市の影響力が増大するなかで,山村が地域分化していることを明らかにした。 3)三次市を対象として,近年成長している地方都市のサービス業について考察し,それが医療,福祉など公的部門に依存していることを明らかにした。 4)広島県庄原地区を事例としてその労働市場を検討し,就業者数の減少,労働供給力の減退,工場の閉鎖や撤退による工業従業者の減少,工業内部における雇用動向の差,派遣労働者や外国人労働者という新たな労働力導入などを見出した。 5)中山間地域にとって重要な公共事業の実態を備北地域を事例に考察し,その結果,地方の中央への依存構造を明らかにした。さらにそれを克服することの必要性も提起した。 以上の結果は,当初の研究目的からすればやや断片的なものにとどまるが,今後の地方中小都市圏研究の発展に資する重要な知見が多数得られたと考える。
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