棚田について、近年洪水防止、土壌浸食防止などの国土保全の役割や景観が評価され、これを保全しようとする動きがみられる。そのなかでも、最も活発な展開がみられるオーナー制度について代表的な地域を調査した結果、次のようなことが明らかになった。 (1)オーナー制度は、都市住民と農民とが交流することによって農村空間を共有し、棚田の保全を図ろうとするものである。 (2)都市住民は、地方自治体を通して会費を払って市民農園として面積100m^2程度棚田を借り受けている。 (3)制度は、米30kg程度が保証され、田植、稲刈などが体験できる農業体験型と農園でのほとんどの作業を行い、そこでの収穫物を持ち帰ることのできる作業参加型に分けられる。 (4)会費は、市民農園の管理費として地元農家によって組織される保存会に支払われ、会員の農家経営を支援するのに用いられている。 (5)各地域は、それぞれの地理的条件に適合したオーナー制を立ち上げており、固有の特徴がみられる。すなわち、高知県檮原町では都市住民が来町してカントリーハウスと呼ばれる農家民宿に宿泊して作業を行うグリーン・ツーリズム型、奈良県明日香村では都市住民が週末毎に来村して農作業を行う通い耕作型、長野県更埴市と三重県紀和町では見事な棚田景観の保全を重視する景観保全型、福岡県浮羽町と兵庫県加美町では都市住民に農産物を買取ってもらう農産物直売型のオーナー制が展開されている。
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