研究概要 |
本研究では,米軍偵察衛星写真を用いた地形判読をもとに,インド-ユーラシアプレート境界の活断層の特徴を広域的に把握することによって,典型的な衝突境界であるインド-ユーラシアプレート境界の特性を明らかにした. 写真判読に先立ち,本研究で用いた米軍偵察衛星写真の特徴をまとめた上で,地形学的研究への応用を他の衛星画像や空中写真との比較から検討した.米軍偵察衛星写真は,同縮尺の空中写真とほぼ同程度の解像度を有し,空中写真の代用品として十分な品質であることを,ネパール東南部ヒマラヤ前縁帯における断層変位地形の判読の比較から明らかにした. 次に,インド・ネパールのヒマラヤ前縁帯に分布する活断層について,詳細な地形判読をおこなった.その結果,インド北東部においてヒマラヤ前縁-ベンガル断層を発見するとともに,ネパール北西部からチベット間においてヤリ断層を発見した.この2つの断層の発見によって,ガンジスデルタからチベット高原のカラコルム断層まで垂直的な地形区分を横断する長大な横ずれ活断層帯が存在することを推定した. また,本研究では,ネパール・インド国境からデラドゥン間において詳細な地形判読をおこない,この区間に段丘面や扇状地を明瞭に変位させるMBF,HFFが存在することを明らかにした. 今後,インド・ネパール以外のインド-ユーラシアプレート境界であるアフガニスタンやミャンマーなど,政治的な理由から現地調査が難しい国・地域において米軍偵察衛星写真を用いて,活断層の分布とその変位様式を明らかにして,インド-ユーラシアプレート境界の特性を実証的に解明する必要がある.
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