研究概要 |
ここに、平成10〜11年度の2年間に渡る研究成果をまとめて報告する。本研究では,まず「香りの心理効果」と「生理効果」双方の客観評価の確立を目指した。 その結果、平成10年度に「香りの有効性」を心理統計学的視点から判別するための官能評価実験法を確立することが出来た(J. Home Econ. Jpn., Vol.49, 1281-1260, 1998に発表)。本法の特色は、香りの心理効果」を3種類の"作業"(「精神作業」、「踏台昇降運動」、「自然環境音聴衆」)との関連で統計学的手法(t-検定と符合検定)および我々の開発した"官能評価スペクトル"双方により評価出来るようにした点にある。そして、平成11年度には、アロマテラピーで用いられる広範な香りについて上記手法を応用し、リナロール、ペパーミント、バジルを含む16種の香油に関する「香りの心理効果」を明らかにすることが出来た。これらの成果は、Chemical Senses Vol. 24, 415-421(1999)に発表済みである。 「香りの生理効果」については、上記との関連からリナロールの効果に焦点を絞った研究を行った。リナロールは異なる光学活性構造を持つ有香分子であるが、その点に着目し、まずリナロールの3種類の光学活性体((R)-(-)、(S)-(+)-、(RS)-(±)-体)をガスクロマトグラフィーにより分離精製した後(Analytic Chimica Acta Vol. 365, 293-299, 1998)、それら3種類についての匂いを知覚と匂い応答反応(簡易脳波計による)をそれぞれ詳細に調べた。その結果、リナロールの匂い知覚は光学活性構造依存であることを示すと同時に被検者に課した"作業"依存性であることも明らかにした(Chemical Senses) Vol. 25, 77-84, 2000)。上記は、「匂い知覚」および「匂い応答反応」における香りの光学異性体構造との関連を始めて明確な形で示した研究で、高い評価を得た。なお、「生活科学・健康科学領域への応用」は基礎的研究段階に留まった。
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