研究概要 |
化学物質による室内空気汚染が問題(シックハウス症候群等)となっていることから,シロアリ防除剤のクロルピリホス,衛生害虫・不快害虫駆除剤のペルメトリンを取り上げ,リスクアセスメントのためのモニタリング手法の開発を行うとともに,室内空気汚染の調査を実施した。併せてHCHO,VOCsについても調査を行った。 クロルピリホスは8家屋中3家屋(防除後2〜3年)の室内(居間)空気中から21〜26ng/m^3の範囲で検出されたが,厚生労働省の指針値(1000ng/m^3,小児等100ng/m^3)以下であった。しかし,これらの家屋の居住者からは尿中代謝物のTCPが9人中7人に検出された。ペルメトリンは8家屋中5家屋から3〜61ng/m^3の範囲で検出され,これらの家屋の居住者からは尿中代謝物のPBAが12人中5人に検出された。 HCHOは8家屋すべてから検出され,18〜103μg/m^3の範囲であった。この中,一番新しかった家屋(築後3ヵ月)では指針値100μg/m^3を超えていた。 VOCsとしてはトルエン,キシレン,エチルベンゼンの検出頻度が高かった。しかし,一番新しかった家屋でも,それぞれ95,34,55μg/m^3と8家屋中最高値を示したものの,それぞれの指針値260,870,3800μg/m^3は下回っていた。また,パラジクロロベンゼンはこれを含有する防虫剤を使用しているか否かで室内空気中濃度は大きく異なった。 以上,今回の調査から,シロアリ防除後あるいは築後の日が浅い家屋,防虫剤・殺虫剤を頻用している家庭では室内空気中化学物質の濃度が高くなり易いことがわかり,換気に留意することの重要性が示されるとともに,室内空気中化学物質のモニタリングとそれに基づく長期暴露のリスク評価の必要性が示唆された。
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