研究概要 |
鶏卵を添加した小麦加工品であるパンやパスタを調整すること,卵白の主要アレルゲンであるオボムコイド(OM)は,変性・不溶化して抗原性を消失することを見いだした.このように変性・不溶化した卵白アレルゲンが消化酵素による部分加水分解によって,再活性化して食餌性アレルギーを誘発しないという確証を得ることは,次の臨床経口負荷試験へのステップとして不可欠のことである.そこで,小麦粉との複合系における鶏卵アレルゲンタンパク質をペプシン、トリプシン、キモトリプシンを用いたin vitro消化を行い,鶏卵アレルギー患者が鶏卵を添加したパンなど小麦加工食品を食べられる可能性を模索して,次のような成果を得た. 1.卵白主要アレルゲンタンパク質であるOM,オボアルブミン(OVA)を胃液類似条件下でペプシン消化を行い,これらの消化物に残存する抗原性を抗OMあるいは抗OVA特異抗体を用いた免疫化学的方法で比較した。加熱したOVAはペプシンで消化されやすくなったものの,OMは加熱の影響を受けにくく,OVAに比べて消化性は劣った。卵白の状態で加熱した後ペプシン消化を行うと,OM単独で加熱・消化したものよりOMの抗原性は顕著に減少した。2.卵白を添加したドウおよびパンを120分までペプシン消化した消化物を上澄と沈殿物に分けて,それぞれの抗原性を抗OM特異抗体を用いたimmunoblottingおよび競争阻害ELISAによって調べた。ドウの状態ではトリプシン消化物に抗原性が残存したものの,パンでは120分の消化でOMの抗原性は上澄,沈殿物共にほぼ完全に消失した。しかし、トリプシン、キモトリプシンの場合にはその抗原性が残存した。3.鶏卵添加パスタのドウと茹でたパスタをトリプシン消化してその抗原性を同様に検討した。パスタの場合もドウ消化物に抗原性は残存したものの,茹でたパスタのペプシン消化物ではその抗原性が消失した。
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