研究概要 |
大学進学率が50%を越し,大学がユニバーサル化し,学生のもつ知識,能力には大きなばらつきが生じ,卒業後の進路は多様化している.工学教育でもプロフェッショナルとサブプロフェッショナルの2レベルの教育を並行して行う必要がある.エンジニア教育課程における基礎物理教育の内容と水準が問題になる. 国際的に通用するエンジニア教育課程における基礎物理教育の主目標は,米国工学基準協会の工学教育基準によれば,「物理学を実地に応用できる能力」と「生涯にわたって学びつづける能力」の養成である. 本研究では,国際的に通用するエンジニア教育課程における基礎物理教育の教育内容と水準を,国際資格である米国のプロフェッショナル・エンジニア資格取得のためのFE試験および米国工学系大学院入学の統一試験のサンプル問題の内容とその難易度の検討に基づいて研究するとともに,物理学と数学の知識を実地に応用する能力の養成法について研究した. その結果,工学一般の試験問題は工学の基礎になっている物理学の幅広い分野の基礎的知識と,その実地への応用能力を重視した平易な問題であることが判明した.この比較を通じて,日本の物理教育が『高校⇒大学⇒物理学研究者』という進路向けであり,もっと幅を広げて『高校⇒大学⇒エンジニア』という進路向けに変更する必要があることがわかった. 学生が,物理学の知識を実地に応用できるようになるため,また生涯を通じて学ぶ能力を養うために必要な,数理的推論能力,抽象的に考える能力,数理的,論理的な事柄を日本語で表現できる能力などを基礎物理教育で養うことが必要である. このような教育目標を達成するため,必要な水準は保っているが平易な教科書,「基礎からの物理学」,「基礎からの力学」,「基礎からの電磁気学」を完成させ,「基礎からの物理学」をWEB-TEXT化した.
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