心不全の治療における薬剤療法の目的は、心拍出量や体・肺循環の動・静脈圧などの血行動態「変数」を、病的な状態から許容される正常な状態に回復させることにある。各種の心不全治療薬の効果は心・循環系の力学的なパラメータの変化として記述できるが、循環動態変数に対する直接の変化として考察することは薬物効果の原理上、極めて困難である。 これは、心・循環「パラメータ」と循環動態「変数」が生理学的機構を介して複雑に関連しているためだが、このため心不全状態の生理学的な理解と診断・治療に際しては、心・循環器系全体を記述できるモデルに基づく考察は極めて有用である。 本研究の目的は、心不全状態の生理学的な理解と診断・治療の教育のために、心・循環系の力学モデルを中に持つ、インタラクティブな電子教科書を作成することにある。 初年度(1998年)は 1.心・循環モデルの再検証と循環パラメータの同定 2.モデルの数学的な定式化 3.モデルの数値解法の検討 の作業を行い、最終年度(1999年)は 4.シミュレーションの計算部分のコーディング 5.電子教科書のテキスト部分の作製 6.電子教科書へのシミュレータの組み込み を行い、ソースプログラムをインターネット: URL http://bme.ahs.kitasato-u.ac.jp:8080/docs/ts/html/cardio/ で公開するとともに、シミュレーションの結果についても報告した。
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