研究概要 |
本研究では,児童生徒のものづくりにおける器用・不器用感の意識構造を明らかにすることを目的とした。研究方法は,次の2つの方法をとった。 第1は,小学3年生から中学3年生の全ての学年を対象に質問紙調査を実施し,器用・不器用意識構造を検討した。この質問紙調査では,(1)器用・不器用意識の理由,及び器用・不器用意識とものづくり経験,生活経験,遊び,自然体験などとの関係,(2)横断的調査による器用・不器用意識構造,(3)3ケ年間の縦断的調査による器用・不器用意識構造について検討した。第2は,中学校1年生を対象に,器用・不器用意識と作業処理能力が一致するか実験的に検討した。 その結果,1)小学校の児童はものづくりが好きであり(84.1%),中学校ではやや低下すること(76.3%)。器用意識を抱く児童生徒はものづくりの経験,遊びをしている意識が高いことを明らかにした。2)器用・不器用意識を横断的に調査した結果と3ケ年間の縦断的な調査結果とは近似であることを明らかにした。3)器用・不器用意識構造を因子論的にみると,器用を抱く児童生徒の意識構造には,巧緻的技能因子との関連が認められ,小学校6年生と中学校2年生に因子が変化する分節点があることを明らかにした。さらに器用・不器用意識は,「作業結果の意識」,「イメージとのギャップ」,「他者からの評価」などの自己評価を指標に測定が可能であり,これらの意識は具体的な製作処理能力と一致するといえる。4)実験的には,器用・不器用意識と作業処理能力は一致することを明らかにした。 以上のことから,不器用感を低減させるには,児童期における多様なものづくりの経験,ものづくりに関する環境の整備及び改善が必要であるといえる。
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