研究概要 |
1.数学理解の2軸過程モデルの縦軸を構成する理解水準として,「数学的対象の理解」,「対象間の関係の理解」,「関係の一般性理解」等のいくつかの階層的水準が考えられ,2軸過程モデルの横軸を構成する学習段階として,各理解水準に「直観的段階」,「反省的段階」,「分析的段階」の3つの段階がある。そして,必ずしも直線的にではないが,これらの段階を経て,児童・生徒の数学理解はある水準から次のより高い水準へと深化し得る。 2.児童・生徒の数学理解が深化した授業においては,2軸過程モデルの横軸を構成する3つの学習段階を経て,縦軸に位置づく理解水準が上昇しており,数学理解の2軸過程モデルの妥当性が実証的に示されたと言える。 3.児童・生徒の数学理解を深化させる授業を教師が構成し実施する際に,2軸過程モデルがその枠組みとして有効に機能し得る。ただし、授業で扱う教材に応じて2軸過程モデルをより具体化し,問題状況の設定を工夫したり,児童・生徒の主体的な活動や話し合いなどの活動を促したりすることが必要である。 4.数学理解の2軸過程モデルの構築は,主として認知心理学的パラダイムを基底とし,構成主義的認識論に立って数学理解の解明にアプローチしようとする研究に位置づく。しかしながら,そのモデルを用いて授業での算数・数学の学習における児童・生徒の理解過程を解明したり,そのモデルを授業構成に適用したりするためには,その他の社会学的パラダイムや人類学的パラダイムに基づくアプローチによる研究によってそれを補完する必要がある。
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