本研究では、「分数」「面積」及び意味が不明な問題等のいわゆる「問題のある問題」を素材とし、児童の実態を調査研究によって明らかにすると共に、授業研究を行い検討を加えた。 1.「分数」については、児童の量分数概念理解の様相を明らかにすることを目的として継続的調査を実施した。その結果、量分数に関する混乱は3年次での「分数」学習直後から発生し、半年余りはそれ程の変化はないが、4年生での「分数」学習前にはさらに正答率が低下することが示された。また、問題の提示方法や図示の異なりによって、正答率が変化することも明らかとなった。これらの結果を基に、4年生を対象とした実験授業を実施した。その結果、延長性を示唆した数直線への分数値の位置づけを第1時に、量分数の図示を第2時に扱った学級では、量分数に関する大きな混乱は生じなかった。このことから、量分数概念の理解に際して数直線モデルの有効性が推測された。 2.「面積」については、面積と周長の混同の問題を取り上げ検討した。4年生を対象とした実験授業の結果、この授業のみではそれら2つの分離は十分に達成されなかったが、格子点を結んで図形を作ったりジオボードを操作したりする活動が、児童の情意面に好影響を与えることが示された。 3.意味不明の問題、一意的な数値解を得るには条件不足の問題等の「問題のある問題」については、小学校4、5年生を対象とした予備調査を実施し、検討を加えた。その結果、問題場面の設定や教示の仕方が児童の回答に影響を与えることが示唆された。 これらの結果から、特に当該の概念等への導入部分における問題状況の設定とそこでの活動のありようが、本時及びそれ以降の授業・学習に大きな影響をもたらすことが推測される。
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