研究概要 |
本研究は,聴覚機能,知的機能,運動機能など様々な発達の側面に重複する障害を持つ子どものことばやコミュニケーションの発達を支援するための方法と成果について実践的研究の成果をまとめた。まず,難聴を伴う重複障害児の原因疾患と聴覚障害の様相ならびに補聴器装用指導の成果,言語・コミュニケーション指導の方法について検討した。補聴器を装用して聴覚的な情報の受容を補償した上で,音声言語に限らず,身振りサイン,シンボルなど様々な手段を用いたコミュニケーションの発達を促すことが重要であることが明らかになった。次に,補聴器装用指導を試みた症例のうち,補聴器装用が困難であった症例の問題点とその対応について検討した。また,装用指導開始当初,補聴器の装用が困難であったが,症例に合わせた補聴器の選択などにより,常用が可能になった1症例に対する補聴器装用指導の過程について論じた。第3に,就学年齢になってから,補聴器装用指導がなされた1症例の言語訓練の方法とその成果について検討した。医療機関における言語指導と学校における教育の連携が症例のコミュニケーションの発達を促進させる上で効果をあげた点についても論じた。重複障害児においては,補聴効果に関連する複数の要因が複雑に関連しあうため,個々の症例の基礎疾患や合併症の種類と程度(難聴,知的障害,運動機能障害,行動特性など)を考慮して対応の遅れを防ぐこと,発達段階や難聴の程度など個々の症例の特徴に応じたコミュニケーション・モードを使用し,言語指導の方法を工夫することが重要と考えられた。
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