研究概要 |
本研究の目的は,学生個々に応じて数学的モデリング能力を徐々に向上させるように「数物ハンズオン」授業の教材内容,実施方法等の改善を行い,さらに,授業において本研究の有効性を明らかにすることであった。この授業は,身近な物理現象データを簡易テクノロジー(データ収集機[CBL:Calculator-Based Laboratory],各種センサー)で収集し,得られたデータをグラフ電卓で数学的に解析し,最終的には,解析した方程式の物理的意味の解釈を行う。これにより,身近に生じる実現象が授業で学習する数学や物理学に深く関係していることの実感と興味を増大させ,勉学への動機づけと基礎学力の定着を目的としている。 2年間の研究結果,(1)既習の数式を使ってモデル化できる学生が増えた結果から数学的モデリング能力が向上した,(2)実現象に関する誤った知識が正しい知識へと変容し長期間にわたり保持された,(3)探究の仕方,問題解決能力,発表の仕方などの科学リテラシーが向上した,(4)主体的な探究活動により学生は既習事項を関連づけることができた,(5)中学校時代と比べ数学の必要性を感じた学生が増えた,といったことが明らかになった。 また,教材開発・改良,授業の実施を行った教員(研究グループ)の効果も明らかになった。 (1)これまでの紙の上での知識として理解していた自然現象をと数学の関連性を,教材開発の階段における具体的な実験を通して改めて体で実感・理解できた。 (2)普段の授業で自然現象の話題を取り上げるなど指導に幅ができた。 (3)「数物ハンズオン」授業では,普段の授業では見られない学生の発言,行動,考え方に接したり,学生の意外な考え方に教えられるなど,学生とのコミュニケーションが増えた。
|