研究概要 |
本研究の目的は,現在日本の学校教育現場等で行われている外国人等の子どもたちへの日本語教育や日本文化適応教育について,広く日本人等の子どもも対象とした「多文化教育」の一つとして実践するための方法論の開発に資することである。 本研究を続けてきた3年間,学校現場はもちろん地域社会においても,外国人等の子どもたちの受け入れを問題ととらえ何らかの対応を模索する動きが徐々に進展してきた。それにつれて,当該の子どもたちの深刻な状況も次第に明らかになってきていている。 本研究では,大阪地域でのアクションリサーチを中心に,広島,群馬など十数の都府県の教育現場等を尋ね関連の情報を収集した。その結果,小学校に比べ中学校はより問題が深刻であること,子どもたちの中でも出身国によって状況の違いがあること,受け入れ対応のよし悪しは教師等の関係者個人の意識と行動力によっていてシステムとして確立していないことなどが,改めて明らかになった。また,これらの子どもたちが学校や地域社会で十全な発達と自己実現を果たしていくために,当該の子どもたちに対する基本的な教育では,子どものアイデンティティーに配慮しながら母語と日本語双方での「学習言語」の習得を目指す必要があると確信するに至った。さらに,そのためには,日本人等を含めすべての子どもたちに対する人権意識や多文化受容能力の向上が必要であるという思いは強まった。今後,それらのシステムの確立に向けて,さらに調査研究を続けたいと考える。
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