研究概要 |
科目選択を入学試験によって得られるデータは一般に欠測値を含む不完全データとなる。このような場合でも,合否判定は単純な合計得点で行われることが多い。ところが科目の難易度と受験者の学力との対応関係によっては,選択した科目によって有利不利が生じる可能性が常に存在する。そのため単純な合計得点による合否判定は必ずしも公正なものであるとは言えない。本研究ではこのような不公正をできる限り少なくするため,不完全データ行列から科目間較差を可能な限り小さくしながら,その一方で,個人差を最大とするような合成得点を求める方法を開発した. この方法の特色としては,欠測の発生機構に確率モデルを導入したり,数値最適化法などの複雑な計算アプローチに頼ることなく,一種の主成分得点を解析的に求められることが指摘できる.これはこの方法が,いわば科目の効果(難易度)と受験者の効果(学力)を要因とする2元配置の分散分析モデル(ただし交互作用項はないものと仮定している)のもとで得られる決定係数の最大化問題という形で定式化されていることによる. 平成10年度においてはFortran90言語により,この方法の計算アルゴリズムを開発した.また,計算アルゴリズムのクロスバリデショーンはS-PLUSにより行い,アルゴリズムの正確さを確認した.さらに平成11年度においては上記で開発したプログラムを利用し,モデルの性能評価を詳細に行い他の既存の方法,特にEM法による補完後のデータから求められた合成得点との比較検討を行った.前者の目的に対してはシミュレーション・プログラム新たに開発し,後者についてはSPSS Missing Value Analysisを利用した.
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