研究概要 |
(平成10年度の研究成果) 1.未来版管理モデルの開発 将来の発展方向に関して不安定な状態にある中間成果物に対して,作業の並列化,効率化と一貫性の維持支援を目的とする版管理モデルを開発した。ソフトウェア分散開発においては,共有情報の変更において関係者の承認をとるために長時間の待ち状態が発生し,作業効率の低下をもたらす。そこで,変更要求の承認をとる活動とは独立に変更作業を進めるモデルと機構が必要になる。そこでは一貫性の維持が困難である。本研究によって開発した「未来版管理モデル」は双方の要請を充たすものである。未来版管理モデルは,変更要求空間,永続版空間(従来の版管理モデル),未来版空間の3つの版空間からなり,変更要求の承認を待たずに,中間成果物を永続版空間から未来版空間にチェックアウトすることにより,先行して並列に作業を進めることを可能にする。このとき,「変更要求が承認されずにチェックアウトされている」という事実を,中間成果物に付加される汚染マークにより管理することにより一貫性制御をおこなう。 (平成11年度の研究成果) 1.未来版管理モデルの実装 未来デルタ機構と汚染マーキング機構の原理をCUS版管理機構を利用して実装した。実現したシステムは以下のような機能を有する。(1)永続版空間から未来版空間へのチェックアウト機能,(2)未来版空間から永続版空間へのチェックイン機能,(3)未来版の複製をとる機能,(4)2つの未来版をマージする機能,(5)競合の検知・解消支援機能,(6)版の進化に関する情報の提示機能 2.討議スレッドの自動抽出機能の実装 変更要求は主に電子メールを利用してなされることが多い。変更要求管理の一環として,電子メール中の討議スレッドを,会活分析の手法を利用して抽出するツールを開発した。 (まとめ)両年度にわたる研究の結果,未来デルタ機構と汚染マーキング機構および未来版管理システムを開発した。
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