研究概要 |
本研究では,遺伝的アルゴリズム(GA)の既存の問題点に対処するために,(1)GAのパフォーマンスに大きな影響を持つ遺伝パラメータ値をアルゴリズムの実行中に動的に変更するパラメータ値調整機能を持ち,(2)ハードウェアで実現することを前提としたGAを開発することを目的とした. 平成10年度においては,個体の優劣度に基づいて交差手法と突然変異確率を適応的に選択する機能を持つGAハードウェア(GAA-II)を開発した.GAA-IIは単体でGAハードウェアのコアプロセッサとして動作すると共に,複数のGAA-IIを相互接続することにより並列GAとしても動作する.Verilogハードウェア記述言語を用いてGAA-IIのハードウェア設計を行なった.シミュレーションの結果,GAA-IIはソフトウェアで実現されたGAと比較して,同等の解をソフトウェアの20〜50倍高速に求めることを確認した.GAA-IIのLSI試作を東京大学大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC)に依頼し,試作チップは平成11年9月に納入された. 平成11年度においては,試作が完了したLSIチップの評価を行なうための評価ボードを開発し,ハードウェアとしての評価を行なった.平成12年3月現在,まだデバッグ中であるが,チップの基本的な機能は仕様どおりに動作することを確認している.また,GAA-IIの拡張として,並列GAのパラメータ値調整機能についても研究を進め,階層人工モデルに基づく並列適応的GAを新たに提案した.提案並列GAでは並列GAを構成するプロセッサ間で遺伝パラメータ値の適応的調整を行なうことにより,より優れた解を短時間で求めることを可能とした. 本研究で得られた結果については国際会議,国内研究会,論文誌論文等で公表した.本研究により,遺伝パラメータの適応的調整機能を持つGAハードウェアに関する多くの知見が得られた.
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