研究概要 |
研究成果は大きく3つに分類できる。 1.線形乗法計画問題に対する厳密算法と近似算法:準凹関数である線形乗法関数を目的関数に持つ数理計画問題に対して理論と算法の研究を行った.この問題はpが大きい場合に正確な最適解を求めることが非常に困難な問題である.まず,p=2の場合について,有限時間で厳密な最適解を与える算法を提案し,計算実験を実施した.その結果,これまで提案されている近似算法に比べ計算時間の点でも優れていることを確認した.さらに,一般のpの問題について従来から提案されている近似算法に対して以下の2つの改良のアイデア(1)探索の初期点となるパレート最適端点の探索方法の改良,(2)パレート最適なフイエスの構成方法,を取り入れた.計算実験によって得られた解の精度は最適解の95%程度であった. 2.経済均衡問題の解の作る連続体について:経済均衡問題から導かれるある種の方程式系の解の全体が連結な集合を作ることを示した.これは,経済のパラメータが連続的に変化した際の競争均衡の変化が連続的であることを意味しており,経済学的に興味深い結果であると考えている. 3.制御に制限のあるネットワークの最大流問題の定式化と算法:ネットワーク流の制御可能性に制限がある状況では,最小流量を持つ極大流が重要となる.これは,「最も効率悪く」利用した際のネットワークの効率を示す指標である.この問題は多目的計画問題のパレート最適解上での線形関数の最小化となる.まず,パレート最適解上での数理計画問題に対してこれまでの研究成果を調査し,総合報告の形で纏めた.これまで提案されている算法の多くは,多目的計画問題の目的関数の個数が問題の変数の個数に比べ十分に小さいとの仮定をおいている.そのため,制御に制限のあるネットワークの最大流問題に対してそれらの方法の効率が期待できないので,隣接パレート端点を辿る局所探索法に,T.Q.Phong.とJ.Q.Tuyenによって提案された局所最適解から抜け出す工夫を取り入れた新しい算法を提案し,数値実験を行い,その性能を評価した.この結果最大76次元の問題まで解くことに成功している.
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