研究概要 |
まずPoisson過程に従いジャンプをする幾何Brown運動に対する最適停止問題を精察した.この種の問題に対して,Dixit(1993),Dixit and Pindyck(1994)はSmooth Pasting Techniqueと呼ばれる手法が,その最適値関数と最適停止時刻の導出に極めて有効であることを主張しているが,その数学的正当性については十分な検討が為されていなかった.上記のような問題に対してマルチンゲール論からのアプローチを試みることにより,ある弱い条件のもとでその正当性を示すことができた. つぎに,これに関連して,幾何Brown運動のインパルス・コントロールの基礎理論ついての研究を開始した.これらはオペレーションズ・リサーチ,ファイナンス,国際金融経済学に現れる様々な問題に応用可能であり,最近とくに注目されている分野である.とりわけ,企業の最適配当政策の問題,投資信託におけるキャッシュ・マネージメントの問題,等への応用について,モデル化からそれらの解析的・数値的解法に至るまでのプロセスにおける様々な段階に関して,詳細に渡っての検討を試みた. 続いて,期待効用理論に基づく投資家のリスク回避性と,資産収益の確率優位(確率順序)に基づくリスクの変化が,最適な投資行動へ与える影響に関する比較静学についての基礎的研究を再開した.また,市場リスクの源泉となる金融資産の市場価格の確率的変動,信用リスクの研究において最も重要な要因となる企業の寿命(倒産までの確率的時間),等の持つリスク特性の定性的な記述・表現と比較において有用である幾種類かの確率優位(確率順序)について,とくに信頼性・保全性理論における最近の研究成果に焦点を当て,検討・整理を行った. さらに,複数種類のコストが存在し,それらの一部の種類についての平均コストは制約として組み込まれ,残りの種類についての平均コストは目的関数とした,いわゆる,多種コスト制約を持つ多目的Markov決定過程に関する基礎理論・アルゴリズム・応用に関する研究も行い,一定の成果を得た.
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