研究概要 |
1.研究目的:四国の太平洋沿岸は,南海トラフの近郊で発生する巨大地震に伴う大津波により,100〜150年の間隔で有史以来多大な被害を受けてきた.本研究は,2035±15年に起きるといわれる次の南海地震津波に対し,四国沿岸域における現況での被害予測を行うとともに,被害軽減対策を提案することを目的としたものである.とくに,沿岸域集落の危険度を評価するとともに,人的被害の予測手法を開発し,沿岸域集落における具体的な避難法を明示して人的被害軽減に寄与しようとするものである. 2.研究成果:(1)瀬戸内沿岸を除く,豊後水道,紀伊水道を含めた四国の沿岸域についてM8.4級の安政南海地震をモデルにした津波を任意の場所で発生させ数値シミュレーションにより津波到達時間,津波高さ,既存堤防の越波の程度を求め,それらに基づき,津波の危険度を予測し,危険度の高い集落を明らかにした. (2)1707年宝永地震津波,1854年安政南海地震津波で人的被害が大きかった高知県土佐市宇佐について,人間の避難行動(避難開始時間,避難速度),被災条件(浸水深50cm以上)を考慮した数値シミュレーションを行い,GISを利用して,陸上に氾濫する浸水状況の時間変化,経路の選択を行いつつ避難場所へ移動する状況を示した.これらのことから,避難途上,浸水深が大きく進行不可能となること,あるいは避難経路が閉ざされ進行が不可能となることなど,溺死場所の把握および溺死の発生機構を明らかにし,溺死者数も把握することができた.また,避難開始時間を早くすれば,急激に溺死者数を減ずることができることを定量的に示すことができた. (3)さらに,溺死の条件として浸水深さのみならず,氾濫水の流速を考慮した数値シミュレーションを行った結果,さらに溺死者が増加することが確認できた.
|