研究概要 |
1997年7月10日,鹿児島県出水市針原川において土石硫が発生し,死者21名を出す災害となった.この土石硫は,勾配26°の斜面で崩壊が発生した後,土石流化し,平均勾配6.8°の区間を流下し,勾配3.7°〜2.4°の区間で氾濫・堆積したものである. 本研究の目的は,この土石流の流動シミュレーション手法のための基本的事項を明らかにすることである.得られた結果は以下の通りである. (1)針原川において発生した土石流の流動・堆積過程を明らかにするため,勾配の急減した水路において,上流側の土石流流下水路の勾配をθ_u=4°,6°とし,下流側の土石流堆積水路の勾配をθ_d=2°として水路実験を行った.河床材料として粒径d=0.84mmの粗砂とd=0.17mmの細砂を用いた.粗砂の場合,勾配急激点において多量に土砂が堆積し,時間の経過とともに上流,下流に堆砂が進行していく.一方,細砂の場合,勾配急激点で堆積するのではなく,それより下流側で最も多く堆積し,堆砂は上流側にあまり進行しない. (2)上述の(1)について数値計算を行い,実験結果と比較した. すなわち,運動方程式,全相連続式,固相連続式をマコーマック法を用いて差分化し,流量,水深,河床高を連立して計算した.境界条件は上流端で一定な流量と等硫水深を,流砂量として平衡硫砂量を与えた.下流端の量はBox差分を用いて計算した.初期条件としては,水深も流量も0とした.得られた計算結果は上述の実験結果(1)を良好に説明するものであった. 以上の結果は,針原川において発生した土石流の流動シミュレーション手法のための基礎をなすものである.
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