研究概要 |
熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂を対象に,最も低コスト,無害,無尽蔵である水を用いて熱分解法およびプラズマ法による再資源化を試みた。反応容器内生成物を各温度別に比較したところ,熱分解法,プラズマ法とも200℃以下では全く生成せず,300℃付近から急激に増加し,熱分解法では,400℃をピークにその後は減少した。したがって,不飽和ポリエステル樹脂を効率よく分解するには400℃以上熱が必要であることがわかった。400℃での生成物を熱分解法,プラズマ法で比較したところ,いずれも16種類の生成物を確認した。生成量が多い順に列挙すると,両分解法ともアセトアルデヒド,プロパナール,アセトン,アリルアルコール,プロピレングリコール,エチレングリコール,フェニルアセトアルデヒド,テトラヒドロフラン,2-ブタノン,2-Et-Me-1.3-ジオキソラン,2-プロパノン-1-オール,2-プロパノール-1-アリルオキシ,5-ヘキセン-2-オール,酢酸,フェニルアルデヒド,無水フタル酸の順であった。原料である不飽和ポリエステル樹脂の構造が反映されたプロピレングリコールなどの生成物と共に全く反映されてないテトラヒドロフランなどの生成物が得られていることがわかった。テトラヒドロフランなどは原料のポリマー中には含まれない構造であるので,生成物同士が反応して生成したのもと考察される。最適分解条件(400℃)で転化率について比較したところ,前者が41.34%,後者は33.37%であった。これらのことから,不飽和ポリエステル樹脂を,付加価値の高い物質に変換させる為の手段として,水を用いた熱分解およびプラズマ分解は有効な手段であり,熱分解の方が高効率であることがわかった。
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