研究概要 |
本研究対象の電池は,電力貯蔵や電気自動車用動力源を目的としたもので,ナトリウムを負極活物質,ベータアルミナ固体電解質を隔膜,塩化アルミニウム・塩化ナトリウム混合溶融塩と塩化硫黄(IV),塩化鉄(II)あるいは塩化ニッケル(II)を平極活物質とする電池であり,ナトリウム-硫黄電池にくらべて約100℃低い温度で作動するという特長をもち,また,塩化硫黄(IV)を用いる電池は4.2ボルトという高い起電力を有する。本研究では,この種の電池について,βアルミナ隔膜で分極がおこる機構を解明し,その低減のための方法を見出すとともに,正極活物質の利用率向上のために,正極活物質中での物質移動や電流分布を明らかにすることを目的とした。さらに金属タングステンの電析によって,正極集電体や電池容器のための耐蝕性材料を得ることを目指した。 まず,βアルミナ管または円盤をもちいたNa-S(IV)セルを試作し,βアルミナ隔膜での分極を測定した結果,分極は電流の向きに関して著しく非対称であり,充電時に大きな分極がおこることを明らかにした。つぎに,βアルミナと液体電解質の界面での現象を理論的に説明するために,βアルミナの表面にNa^+イオンの輸率が1より小さいような表面層の存在を仮定することによって,過渡的な分極挙動および定常状態での非対称分極を解釈した。ついで正極活物質中での濃度・電位分布の解析のために,イオンの拡散と泳動を考慮した物質輸送の式と,電気的中性条件から導かれる電位の式を連立させて解く方法を考案し,その有用性を示した。さらに正極集電体や電池容器用耐蝕材料として,タングステンをニッケル基本の上に析出させる方法について検討し,WO_3を含むZnCl_2-NaCl溶融塩中で電解を行うことにより,ニッケル上に緻密なタングステン電析層を形成することができた。以上の研究成果は,本研究対象の電池や同種の電池の実用化に資するものと考えられる。
|