研究概要 |
メソスケール予測モデルと短期の高濃度大気汚染が予測できる光化学反応を含む大気汚染濃度予測モデルを用いて,大阪湾沿岸域を対象に高濃度光化学オキシダントが観測された日について,船舶からの排出が陸域大気濃度に与える影響を検討した.まず,大阪府,兵庫県および海上からの大阪湾岸域を対象にSO_x,NO_x,HCの排出量を算定した結果,SO_xNO_xの船舶からの排出量は,全排出量の約30%を占めており,特にNO_xの排出量が多いことが示された.次に,この推定した排出量を入力データとして,高濃度光化学オキシダントが観測された日を対象にシミュレーションを実施し,観測値との比較を行った.排出量データの推定誤差や流れ場再現の不十分さを考慮すると,計算値と観測値は,ほぼ良好な一致を示した.最後に,船舶からの排出量を0と仮定して計算を行い,船舶からの排出が陸域濃度に及ぼす寄与を調べた.船舶からの排出による陸域濃度上昇域は,12時までは船舶からの排出量が集中している阪神沿岸域に限定されてるが,海風の発達とともにSO_2,NO_2の濃度上昇域は内陸に進入し,16時では内陸40kmまでに達し,特にNO_2濃度は内陸部でも濃度上昇が高くなることが示された.このように,海風が発達するような流れ場では,船舶からの排出による陸域濃度の寄与は沿岸部だけでなく陸域内部にまで影響していることが示された.
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