研究概要 |
藻類の酸素発生速度が毒性物質の存在により抑制されることを利用した酸素発生抑制試験の方法を確立し,その試験感度に対する栄養条件の影響を把握するとともに,実際の自然水に対してこの方法を適用する可能性とその意義について検討を行った。 その結果,標準種(Selenastrum capricornutum)と標準的な検査培地であるAAP培地を用いた場合,6時間で毒性評価が行える迅速法としての酸素発生抑制試験方法を確立することができた。 また,銅を供試物質として培地中の各成分濃度を変えた時の酸素発生抑制を調べることにより,培地成分が試験感度に与える影響を調べた結果,成分によって影響の仕方が異なることが確認できた。このことは,標準培地で評価した毒性が必ずしも実環境中での影響を代表するものではないことを示唆するものであった。 さらに,酸素発生能が藻類共通の性質であると考え,標準種の代わりに実環境中に存在する藻類を用いる試験について検討を行った。その結果,もともと一次生産力の極めて小さい水域を除けば酸素発生抑制試験を適用することは可能であり,水域によっては標準種・標準培地の組み合わせよりも数十倍感度が高い,すなわち毒性物質の影響を受けやすい場合があることが明らかとなった。 以上のことから,現場に即した酸素発生抑制試験を行うことは,標準的方法よりも現場に即した情報を提供できるという点で利用価値があるものと考えられた。
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