研究概要 |
水棲生物のミジンコを用いて、環境毒性物質の影響を高感度で効率的にモニタリングするための新規な手法を開発する目的で、DNA損傷性を指標にした評価法の基礎データを取った。DNA損傷性を高感度で検出するために、染色体のDNA鎖切断を電気泳動のパターンで検出するコメットアッセイ法の適用を検討した。 ミジンコの単為生殖卵を生体から分離して集めたものをホモジナイズして材料とした。しかし、無処理対照の細胞核でもDNA鎖切断によるコメット像が多数観察された。これは、材料とした卵の発生過程が初期のものから孵化直前のものまで種々のものが混じっているため、核の調整操作において物理的な力に比較的弱い染色体構造を持つ卵が存在することが一因と考えられた。次にミジンコの生体をホモジナイズして核分画を調整した。得られた核分画をアガロースに包理し、電気泳動してDNA損傷をもつ核のコメット像を観察した。その結果、DNA損傷をもつ核の出現頻度は無処理対照では3.6%と低く、良好な結果が得られた。 ミジンコを人工飼育水中で変異原のメタンスルホン酸メチル(MMS)で30分間処理してコメットアッセイをおこなった。5μg/ml,20μg/ml処理群では各々7.0%,8.2%であったが、50μg/ml処理群では22.7%と明らかに高い値が得られた。以上の結果から、MMSを50μg/ml以上の用量で30分間処理することでMMSのDNA損傷作用が検出できた。今後、核分画調製時の回収率と精精度を上げるための検討が必要であると考えられた。また、MMS以外の種々のアルキル化剤で処理したミジンコについてもコメットアッセイを行って有用性を明らかにする必要がある。
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