研究概要 |
石油や有機塩素化合物により汚染された土壌,海域,地下水等のバイオレメディエーションを効率的に行うには,芳香族化合物分解菌群のモニタリングが重要となる。本研究では,様々な芳香族化合物の主要な中間代謝物であるカテコールの環開裂を担うカテコール1,2ジオキシゲナーゼ(C1,2O)及びカテコール2,3ジオキシゲナーゼ(C2,3O)をコードする遺伝子をPCRにより検出するための,遺伝子抽出法及びプライマーの設計を行った。GenBankに登録されているC12O遺伝子11種,C23O遺伝子20種の遺伝子配列データを入手し,各配列中で比較手的相同性の高い配列を相補率が低くならないように,フォワード,リバースの各プライマー候補に複数選択し,その有効性をPCRシミュレーションソフトAmplify(Ver.1.2 University of Wisonsin,1992)によるシュミレーションと実験的検討により評価した。その結果,GenBankに登録されているC12O全てとC23O遺伝子の17種を検出できるプライマーセットを作成できた。さらに環境中より分離した芳香族化合物分解菌に対して各プライマーセットを適用したところ,芳香族分解活性を有する感きょぅ微生物の50-80%を検出することができ,本プライマーの高い実用性が示された。この結果を受けて,MPN-PCRにより多様な芳香族分解菌を感度良く定量するために,様々な反応条件でPCRを行ったところ,アニーリング温度を順次下げるStepDown-PCRにより多様な菌株のカテコール分解遺伝子が増幅され,20cell以上の菌数で検出が可能であった。さらに様々な水環境試料中に存在する分解菌の定量を試みたところ,環境試料に含まれる物質や細菌よる定量阻害はなく,環境試料中の分解菌定量法が確立された。本研究成果から,バイオレメディエーションの対象環境中で,浄化微生物群を検出・定量することが可能となったものと考えられる。
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