研究概要 |
都市は人口環境として自然環境を対極にあり,東京都区内や福岡市などの大都市はここ100年間で2℃もの昇温を示している.これはまさに21世紀後半の地球温暖化の前駆症状と言うべき状態である.その原因は,人口集中にともなうエネルギーの使用増加と都市の構造自体の特性による.後者は植生を除去しコンクリート類に置換し蒸発散を極度に減少させたことが問題である.本研究は,この構造変化によるマイナスを補う方式の開発を目的とする.そこで蒸発環境を回復させる資材として保水性セラミックタイルを使用し、その気化冷却機能特性について実験的研究を行った. 保水性セラミックタイルを平面と鉛直に敷設し,植物(イネ)や元来のコンクリート屋上面(6階建)の表面温度の発現状態を比較した.湿面としたセラミックスとイネは,乾燥した屋上面に比べ,日射最強の正午において約20℃に及ぶ低温を示した.また,セラミックタイルはイネの表面温度に近い値を示し,両者の差は晴天なら時刻に,あるいは日射量に依存して経時的に変化した.セラミックスは正味放射の大部分を潜熱に転換した.つぎに,単位面積当たり冷却能力を上昇させる方式として折り板型の屋根面について検討した.この場合も元来の屋根面より大幅な温度低下を示した.室内の熱放射環境は人体から熱放射が行われる形となり,元来のケースとは逆となって,室内の暑熱環境は大幅に改善された。このとき蒸発水量は水平底面(0.86mm/h)>南面(0.74mm/h)>北面(0.48mm/h)であった.熱放射特性では人体に対して従来型が加熱,セラミックタイルでは放熱に作用し,熱ストレスを軽減するものであった.広域の屋外表面温度を低下させるには,平面敷設でも降温効果は大きいので,必ずしも傾斜面を持たせる必要はないと考えられた. 都市域内にこの方式を広めることができれば,大幅な熱汚染の軽減が達成できよう.
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