研究概要 |
本研究はナホトカ号座礁事故により福井県三国町に漂着した重油中の高分子量多環芳香族炭化水素(HPAH)を微生物処理によって分解除去することを目的にMycobacterium sp. H2-5株を用いて実験を行った。 1.漂着重油と市販C重油中のHPAHの分解 H2-5株を重油を塗布したガラスビーズに無機培地と共に加えて、30℃、20日間培養した。重油中のベンツ[a]アントラセン、ピレン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[ghi]ペリレンは、上記により、漂着重油ではそれぞれ、99%、92%、60%、33%減少し、市販C重油では、それぞれ92%、99%、60%、10%減少した。 2.ピレン分解代謝物について 本菌によるピレンの分解液を酢酸エチル抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析すると8個のスポットが認められた。このうちRf値が0.19付近の物質は、GPLC, Ms, H-NMRで分析した結果、ジヒドロキシナフトエ酸であると考えられた。Rf値0.35付近の物質はカテコールとよく似たRf値を示したが、H-NMRでは異なるものであった。本物質はHPLCで3ピークに分離し、そのうちの2個はUV吸収が同じ芳香族化合物と考えられた。 3.漂着重油のH2-5株処理液の変異原性 1.と同様な培養を60日間行い、培養物をベンゼンで抽出した後、抽出物の変異原性試験を実施した。その結果、変異原性はコントロールと変わらないか低下傾向にあることがわかった。ベンゼン抽出画分には、より有害な物質の生成はないと考えられた。また、水溶性画分には変異原性は認められず、全体として本処理による変異原性の上昇はないと考えられた。
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