研究概要 |
カルコン合成酵素(CHS)は植物のポリケタイド合成酵素群を代表する酵素で、植物の生理学に基本的な役割をしているフラボノイドの骨格に関与する酵素であり、他の植物ポリケタイド生合成酵素と相同性があり、カルコン合成酵素スーパーファミリーに分類されている。反応機構は脂肪酸生合成酵素(FAS)やポリケタイド合成酵素(PKS)とは同列に論じられず、アシルキャリアー蛋白(ACP)が存在せず、代わりにMalCoAがその役割をしているとされている。本研究でCHSスパーファミリーを取り上げている最大の理由はその分子量が43KDであり、脂肪酸合成酵素を含めたポリケタイド合成酵素が150から300KDという中で飛び抜けて分子量が小さいことにある。1.大量の酵素を得るための大腸菌やメタノル一資化イースト、昆虫細胞でのバキュウロバイラスでの発現系を確立し、原核生物での発現蛋白との反応性の比較を行った。X線結晶解析による三次元構造の解析により、反応機構の解明を目指したが、スクリップス研究所のJ.Noeleらにより、X線解析についての報告がなされている。(J.Noel et.al.,Nature Structral Biology,8,775-783,1999)2.カルコン合成酵素(CHS)と70%以上の相同性があるスチルベン合成酵素(STS)との間には交差反応性があり、両者の酵素の反応物の解析を進めた結果、CHSはかなりの量の環を巻かない副生成物を作る事が明らかになり、点突然変異の結果複製物の量が変化する事が分かった。3.植物で最も原始的な維管束植物であるマツバランはフェニルピロン誘導体を生合成する.現在まで5種のCHS類似のクローンを得、4つのクローンはCHS,STS2種,他の一つは、isovalerophenon synthaseであり事が明らかになった.反応に必須なヒスチジンがグルタミンに変異したクローンでは活性が見られず、変異しているグルタミンをヒスチジンに変異したものもやはり活性が見られず、蛋白の構造全体にわたる変異が、三次元構造に影響を与えたためと考えられる。
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