研究課題/領域番号 |
10680566
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生物有機科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平竹 潤 京都大学, 化学研究所, 助教授 (80199075)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
1999年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1998年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | グルタチオン生合成 / γ-グルタミルシステイン合成酵素 / 遷移状態アナログ阻害剤 / γ-グルタミルリン酸中間体アナログ / Mechanism-based enzyme inaitivator / 酵素自殺基質 / γ-グルタミルトランスペプチダーゼ / 遷移状態アナログ / γ-グルタミルリン酸中間体 / 中間体アナログ / ホスホノジフルオロメチルケトン / ホスホノフルオリデート / グルタチオン / γ-グルタミルステイン合成酵素 / グルタチオン生合成阻害 |
研究概要 |
生体内グルタチオンレベルを制御する機能性化合物を得るために、その生合成の律速酵素であるγグルタミルシステイン合成酵素(γ-GCS)、およびその分解に関与しているγグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)について、それぞれの特異的阻害剤を酵素の反応機構にもとづいて合理的に設計、合成することを目的に研究を行った。まず、生合成酵素であるγ-GCSについて、ATPによって活性化されたグルタミン酸がシステインと縮合する過程の遷移状態を考え、そのアナログとなる四面体型のホスホネートおよびスルホキシミンを合成したところ、いずれもATPの存在下で時間依存的に酵素を失活させる強力な阻害剤として作用した。特にスルホキシミン誘導体は、きわめて強力なslow-binding inhibitorとして作用し、スルホキシミンのS=NH窒素が酵素の活性中心でATPによるリン酸化を受ける結果、実際の遷移状態ときわめて類似した構造をもったリン酸化スルホキシミンを作り出すことによってみずから失活するという、いわゆるmechanism-based enzyme inhibitionが起こっていることをつきとめた。また、スルホキシミンのキラルなイオウ原子に由来する2種のジアステレオマーを不斉アルドール反応を用いて不斉合成したところ、R配置のイオウ原子を持つ異性体が、ATP依存性のきわめて強い阻害活性(K_1=39nM)を示したのに対し、S配置のイオウ原子を持つ異性体は、可逆的で弱い阻害活性しか示さなかった(K_1=12μM)。すなわち、γ-GCSはイオウ原子上のキラリティーを厳密に見分け、R配置のスルホキシミンにのみリン酸化が行われているものと思われる。この化合物は、従来の阻害剤の1000倍以上の活性をもった、きわめて有望な阻害剤である。一方、酵素の触媒作用を受けることにより活性化し酵素を不可逆的に失活させる酵素自殺基質として、L-グルタミン酸γヒドロキサム酸を見いだした。ヒドロキサム酸は、ゆっくりとではあるが、ATPの存在下で酵素を完全に失活させ、ヒドロキサム酸が酵素によるリン酸化を受け、Rossen転位様の反応を起こしてイソシアナートを生成することによってγ-GCSを失活に導いている機構を提唱した。一方、グルタチオン分解に関与するGGTについて、遷移状態アナログとなるL-グルタミン酸ホスホノフルオリデートを合成したところ、非常に強力な不可逆的阻害剤として作用し、活性中心にある求核性残基と特異的に共有結合を形成した。すなわち、一種のメカニズム依存性アフィニティーラベル化剤として作用したもので、こうして修飾されたGGTをイオンスプレー質量分析によって解析し、小サブユニットのN末端Thr残基がホスホニル化されていること、すなわち、この残基こそがGGTの活性中心である求核性触媒残基であることを証明した。そして、GGTが、N末端のThr残基を反応を触媒する求核残基として用いているばかりでなく、酵素自身のプロセッシングにも不可欠な残基として用いられる、いわゆるNtn hydrolase familyの一員であることを証明した。このように、グルタチオン生合成と分解に関わる2種類の酵素について、特異的阻害剤を合理的に設計、合成することに成功した。
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