研究概要 |
グルタミン酸またはGSH合成酵素阻害剤であるブチオニンスルフォキシミン(BSO)によるC6ラットグリア細胞腫のGSH枯渇下で,DNA損傷及び細胞死誘導が明らかになった。この細胞死の過程で,染色体DNAで細胞内活性酸素による1-2Mbpおよび100-800kbpサイズの巨大DNA断片が形成され,最終的にラダーDNA断片化を伴うアポトーシスが誘導されることを見出した。さらに,脂質過酸化および細胞内プロテインキナーゼCの活性化が見られ、活性酸素及び脂質過酸化物の増減にょってアポトーシスが調節されていることを見い出した。アラキドン酸によって12-リポオキシゲナーゼの活性上昇とともに細胞内活性酸素が増加し,それが引き金となって脂質過酸化ラジカル連鎖反応が進行する。また一方で,DNA塩基の酸化反応を引き起こしながら,カスパーゼ-3活性の低下,細胞内ATPの減少を伴い、かつヌクレオソーム単位のDNA断片化を示さないネクローシス様の細胞死を誘導増進するという機構が示唆された。不飽和脂肪酸であるリノレイン酸,リノール酸はともにアラキドン酸同様アポトーシスからネクローシスに転換しかつ100-800Kb,1-2Mbの巨大DNA断片化を促進させ,脂質過酸化と巨大DNA断片化には密接な関係があることが示唆された。次に紫外線による細胞死の機構を検討した。ポリADPリボースポリメラーゼ酵素の失活,NADの減少.枯渇で確認されるDNA損傷の修復に関与する系の破綻から生ずるところの紫外線による細胞死では,カスパーゼ-9およびカスパーゼ-3の活性化が認められ,DNA損傷及びそれを起因とするアポトーシス誘導の機構が関与していることが明らかになった。このアポトーシスは,GSHの枯渇によるグルタミン酸誘導の細胞死の際のDNA断片化のパターンと同じであったが,脂質過酸化を伴わず,またATPの枯渇にみられるネクローシス様の細胞死の機構とは異なることが判明した。
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