研究概要 |
Xylα1-3Xylα1-3Glcは血液凝固系タンパク質のEGF様ドメインに特徴的に存在する糖鎖である。その生合成に関与するUDP-D-キシロース : βーD-グルコシドα-壱,3-D-キシロシルトランスフェラーゼ(G-酵素)の存在が予想された。そこで,ウシ肝臓をホモナイズし,遠心分離による細胞分画を行い,各画分のG-酵素活性を調べた.各画分をUDP-キソロース(UDP-Xyl)とアクセプター2-[(2-ピリジル)アミノ]エチルβ-D-グルコピラノジシド(Glcβ-EPA)とともにインキュベートし,生成物を高速液体クロマトグラフィーで分析した.糖転移生成物Xylα1-3GlcβEPAがミクロソーム画分反応混合物中に検出され,G-酵素はミクロソーム画分に存在することが明らかになった.ミクロソーム画分を1%Triton X-100中,4℃で1時間処理し,酵素を可溶化し,粗酵素液とした.DEAE-セファセルカラム,セファロースCL-6Bカラム,Mono-Qカラム,UDP-ヘキサノールアミンカラムによるクロマトグラフィーを順次行った.これらの4段階のクロマトグラフィーで比活性は3800倍に上昇した.ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果より,まだ完全に単一な酵素タンパク質には精製できていないことが分かった。基質特異性や性質を調べる目的には十分利用できる酵素標品と考えられる.ゲル濾過の結果より,分子量は約65,000と推定される.示適pHは7.2で,活性の二価カチオン依存性を調べた結果,Mn^<2+>で活性が高かった.UDP-Xyl,Glcβ-EPAに対するKm,app値はそれぞれ62μM,18mMであった.ポリアクリルアミドゲル電気泳動でG-酵素活性を示すバンドより酵素を抽出し,一部のアミノ酸配列は決定できる.遺伝子工学の手法を使って,酵素遺伝子を破壊したノックアウトマウスを作成することは可能であり,本研究の成果はXylα1-3Xylα1-3Glc構造の生理的役割を解明する基礎となる.
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