研究概要 |
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は細胞外マトリックスを基質とする一群の酵素であり、その過剰発現は癌の浸潤に関与すると報告されている。近年、MMPのサプタイプとして膜貫通型のMMP(MT-MMP)が5種類クローニングされたが、4番目に発見されたMT4-MMPについては全く情報がない。その理由の一つとして、タンパクに翻訳される全長のcDNA配列が知られていず、酵素の解析が不可能であった事があげられる。そこで我々はまず、MT-4MMPの全長cDNAを取得するところから始めた。また、同時にMT5-MMPの全長cDNAの解析およびそのゲノムマッピングを行った。 膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT-MMP)はそのC末端に膜貫通ドメインを持ち、細胞表層に発現するが、そのアミノ酸配列から、MT1,2,3,5-MMPは膜貫通ドメインの後に細胞質ドメインを持つことがわかる。一方で、MT4-MMPの配列は細胞質ドメインを全く持たない。このような配列はGPIアンカ-型である可能性があり、我々はその是非を検証した。MT4-MMP遺伝子を導入したCOS1細胞を用いて、GPIアンカ-タンパクとしての特徴である、[3H]ethanolamineによるラベリング、また、phosphatidilinositol-specific phospholipase Cによる膜表面からの乖離が、MT4-MMPのC-末端配列依存的に起こることを確認した。また、MT4-MMPはトランスフェクションしたCOS1およびCHO-K1細胞において、可溶型酵素として一部が培養液中に放出された。以上の結果からMT4-MMPがGPIアンカ-型のプロテアーゼであり、その活性制御機構の一部に膜表面からの放出があることが推測された。
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