研究概要 |
真核生物におけるプロテアソームは、細胞内で不要になったタンパク質を速やかに分解し、細胞機能を安定に保ち細胞周期の調節を担う分子量75万の巨大な非リソソーム系細胞内プロテアーゼである。また、プロテアソーム活性化因子PA28が結合し複合体を形成することによりタンパク質を特異的に認識・選別し、ペプチド生成による抗原提示機構をも併せて持つ免疫応答系の超分子集合体として機能する。本研究ではこの超分子系の中でタンパク分解を担当するプロテアソームとその免疫系でのPA28の認識・選別および複合体形成機構を3次元立体構造から明らかにすることを目的とした。 牛肝臓から抽出したプロテアソームをMPDを沈殿剤として結晶化を行い、SPring-8大型放射光施設で回折実験を行った。以前得られていた結(Y.Morimoto,J.B.(1995))とは異なる晶系の結晶が得られ、同じ精製方法、結晶化であるにもかかわらず異なる晶系、格子長の変化は、プロテアソームの分子状態が異なるものと考えられた(Y.Tomisugi,J.B.(2000))。この結晶は比較的分解能が高い(3Å)の回折データを与え、酵母プロテアソームをモデルとした分子置換法により2.5分解能での構造を決定した。牛肝臓プロテアソームに特有と見られる粒子内の塩基性アミノ酸残基の分布などが見られた。また溶液中でのプロテアソームとPA28結合様式をさぐるためX線溶液散乱法による解析を行った。これによりPA28は溶液中では2量体を形成しているものの、プロテアソームとの複合体形成ではそれが解離してプロテアソームの片側だけに結合することが示唆された。上記結晶構造の結果をふまえ結合能力、機構の解明を行っている。
|