研究概要 |
本研究では、線虫(Caenorhabdltis elegans)やオオムギを材料に用い、減数分裂過程での遺伝子組換え機構とその制御系、ならびに生殖細胞形成に対する高温ストレスならびに放射線、紫外線の影響について研究を行った。線虫において、相同的遺伝子組換えに関わる大腸菌recAX様遺伝子は、1種類しか見出せず(Ce-rdh-1:rad51,dmcl/lim15 homolog 1と命名)、本遺伝子の発現をRNA interference法で抑制した結果、正常な減数分裂ディアキネシス期への移行が妨げられ、染色体がランダムに絡まった状態となり、減数分裂が完了できないこと、ならびに放射線に高感受性となることを明らかにし、Takanami et al.(1998)として発表した。また線虫の減数分裂パキテン期の核は、放射線に大変強い抵抗性を示し、その抵抗性は相同染色体間遺伝子組換えに関わるCe-rdh-1などの酵素群の高い活性に起因することを明らにした。さらに、ヒトの遺伝性疾患の原因遺伝子ATM(ataxia telangiectasia mutated gene)と相同的な線虫遺伝子Ce-atl-1(ATM/ATR like 1)が、体細胞分裂ならびに減数分裂時の染色体の維持・安定性に重要な役割をすること、および蛋白質リン酸化酵素をコードするCe-chk-2が、減数分裂期の相同染色体間の対合の制御に必須な遺伝子であることを見出し、それぞれTakanami et al.(2000),Aoki et al.(2000),Higashitani et al.(2000)として学術論文に発表した。次に、オオムギの生殖成長過程における穎花の分化初期の時期は、高温に最も感受性が高く、5日間の高温処理(30℃昼温/25℃夜温)を行うことで、その後の花粉形成が完全に進行しなくなる生殖障害を見出し、Sakata et al.(2000)として論文発表した。
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