研究概要 |
中間径フィラメントは,細胞骨格の主要成分の一つであり,細胞質全体に広がった蛋白質繊維(直径10nm)のネットワークを形成している.中間径フィラメントを構成する蛋白質は,N末端からヘッドドメイン(HD),ロッドドメイン,テイルドメインを持つ.このうちロッドドメインは,αヘリックスに富む四つのサブドメイン(1A,1B,2A,2B)を含む.これまでの解析からフィラメント形成には,少なくともヘッドおよびロッドドメインが必須であることが示されているが,蛋白質の重合に働くドメイン間相互作用の詳細は不明である.そこで私達は一昨年〜昨年度において,中間径フィラメント蛋白質の一つであるビメンチンについて,ドメイン間相互作用を表面プラズモン共鳴センサーを用いて解析した.その結果,生理的イオン濃度においてHDと2Bの間に特異的な相互作用が認められた.そして2Bの両末端を欠損したフラグメントを用いた解析から,2BのC末端がHDとの結合に重要であるという結果を得た.さらに,HDをAキナーゼでリン酸化したところ,2Bとの結合がほとんど失われることがわかった.そこで今年度は,2BのC末端にアミノ酸置換を導入した変異体を作製し,HDとの結合に重要なアミノ酸残基の解析を行った.2BのC末端には,中間径フィラメント蛋白質を通じて保存された疎水性および酸性アミノ酸残基が存在する.それらを親水性で中性のアミノ酸で置換したところ,HDとの結合能が減少した.特に,疎水性アミノ酸残基の置換は著しい減少をもたらし,HDとの結合には疎水性相互作用が重要であることが示唆された.現在,HDの変異体を作製中であり,これによりHD-2B間の相互作用の仕方,リン酸化による影響が,より明らかにされると考える.また、ビメンチンとは性質の異なる中間径フィラメント蛋白質であるケラチン8と18についても,そのHDと相互作用する領域を解析中である.
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