研究概要 |
1,10時間程度のニワトリ胚頚部の外植体培養が可能であり、頚髄に起こる早期の細胞死もその中で進行するが明らかになった。しかし、安定した長期間の培養については今後の課題となった。 2,この系でカスパーゼ-3に対する阻害剤であるDEVD投与を行ったところ、DNA断片化を示す細胞数が減少した。そこで脊髄組織を取り出してカスパーゼ活性を直接計測したところこの酵素活性の上昇がみられた。 3,外植体培養系の開発と併行して、生体内でもin vitroと同様の実験が出来る系を開発した。ニワトリ胚の周囲の羊膜腔内に高濃度の生理活性物質や酵素阻害剤を停留させることで、それらの物質の頚髄に起こる早期の運動細胞死への影響を観察することが出来る条件を決定した。 4,この生体内の系を用いて、カスパーゼ-3様活性の阻害剤を投与して検討したところ。カスパーゼ-3様活性は、アポトーシスの際の核におけるDNAの断片化に関与していることが明らかになった。しかしながら、カスパーゼ-3の活性を抑制しても、細胞死そのものは、遅くなるものの進行し、最終的に貪食を受けた。おなじくカスパーゼ-6様活性に対する阻害剤VEIDの投与を行ったところ、核の凝集が起こらず、カスパーゼ-6が核構造の維持に関わる分子を分解する役割があることが確認された。 5,さらに広汎なカスパーゼ酵素群に対する阻害剤であるBAFを投与したところ、細胞死の進行は著しく遅れたが、最終的には細胞が死ぬことが確認された。これらの結果はカスパーゼに依存しない細胞死実行機序の存在を示すものである。また、この時、死ぬべき細胞が運動神経核の中の特定の領域に集まってくることが明かとなり、この細胞死が運動神経の中の特定のグループに起こることを示す所見と考えられた。 6,生体内の系を用いて、GDNFの頚髄の早期細胞死に対する影響を調べたところ、細胞死を抑制する効果があることが明らかになった。同様にして、shhは影響を与えないことを明らかにした。
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