研究概要 |
1.精製方法の決定。大量調製が容易なK562細胞を用い、ユビキチン(Ub)化蛋白質の精製法を検討した。その結果、第一段階は抗Ub抗体FK2をリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィーに決定した。その際、抗体固定化ゲル1mlに約0.2mgUb当量が吸着し、溶出には3.5M MgCl_2が優れると判明した。この精製標品は、次にSuperdex75のゲル濾過で分画し、30kDaを境とした"高分子量"と"低分子量"のUb化蛋白質画分が得られた。前者は主にマルチUb化蛋白質からなる。後者はUbとチオエステル結合体したUb結合酵素(E2)も含み、E2精製にも有用と判明した。 2.神経突起形成時に特徴的なUb化蛋白質の検出。PC12h細胞を神経成長因子(NGF)存在下で一週間培養した際に出現または増加するUb化蛋白質をFK2抗体による免疫沈降/SDS-PAGEで解析し、前者に3種類(18,19,36-kDa)、後者に6種類(20,23,26,51,68,93-kDa)の候補を見出した。 3.PC12h細胞のUb化蛋白質の精製。NGFで処理したPC12h細胞(2_x10^9個)の細胞質抽出液をFK2固定化カラムで精製しUb化蛋白質画分0.56mgを得た後、ゲル濾過で高分子量および低分子量の同蛋白質画分を獲得した。現在、後者の成分をSDS-PAGEで分離し、順次その限定分解産物のアミノ酸配列の同定を進めている。26-kDaバンドに関してはUb部分配列2種類と未知蛋白の部分配列5種類の結果を得た。 4.抗Ub化タグペプチドに対する抗体作成。標的蛋白の同定に不可欠なUb化タグペプチドに対するモノクローナル抗体の作成は、抗原溶解性の問題から困難を極めたが、ペプチドの設計を改良し樹立に成功した。今後この抗体を用いて高分子量Ub化蛋白質の分析を行う計画である。
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