研究概要 |
本研究の目的は,プレコンディショニングによる長期増強(long-term potentiation : LTP)誘導抑制のメカニズムの明示である。そのメカニズムを「特定周波数のプレコンディショニング刺激が複数の2次情報伝達系を賦活し、その後のLTP誘導を抑制する」と仮定し、(1)プレコンディショニング時のシナプス後細胞へのCa^<2+>流入、細胞内Ca^<2+>storeからの放出,(2)長期増強誘導抑制に関与する2次情報伝達系の検討、(3)LTP誘導の可否とテタヌス刺激後シナプス後細胞でのCa^<2+>濃度との相関、を電気生理学的および薬理学的に検討した。その結果,LTP誘導抑制が,(1)プレコンディショニング時シナプス後細胞へのNMDA受容体を介したCa^<2+>流入とlnositol triphosphate(lP3)受容体を介した細胞内Ca^<2+>storeからのCa^2放出の両者がメカニズムに関与している,(2)cyclic AMPを介したmodulationを受ける,(3)テタヌス刺激で上昇した細胞内Ca^<2+>濃度の半滅期にLTP誘導の可否が依存する,事が明らかにされた。従ってLTP誘導抑制のメカニズムは,(1)プレコンディショニングかシナプス後細胞のNMDAおよびlP3受容体の両者を活性化して特定の情報伝達系を賦活し,(2)その後にテタヌス刺激を与えても細胞内Ca^<2+>上昇の半減期を縮めて、LTP誘導を抑制する,ことが示唆された。
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