研究概要 |
小脳への入力は、苔状繊維が主として橋核などから、登状繊維が、下オリーブ核から投射する。これらの入力の一部が、帯状構造と関りがあることも示唆されている。また、発生にさいして、これら2つの核は、小脳と同じ原基であるprecerebel1ar neuroepitheliumから生まれ、下オリーブ核ニューロンは腹側後部へ、橋核ニューロンは、腹側前部へと移動する。 小脳にはレチノイン酸レセプター(RARα,β,γとRXRα,β,γ)が存在し、さらにレチノイン酸と結合するオーファンレセプターの1つ、COUP-TF2は、帯状の発現が認められ(Yamamoto et al.1999)、延髄にも、これらのレセプターの発現がみられることから、レチノイン酸は小脳・下オリーブ核・橋核の発生に影響を及ぼすことが予想された。そこで、母体へのレチノイン酸過剰投与により、胎児期の小脳、下オリーブ核、橋核にどのような変化がおきるかを、形態学的に調べるため、胎生の中期から後期にかけて、各日令においてレチノイン酸を投与し、胎生18日で組織を調べたところ、下オリーブ核ニューロンの形成に異常が見られた。とくに、胎生8日、9-10日、10-11日のそれぞれの日令での投与においては、下オリーブ核は前後軸方向に2倍近く伸長しており、細胞数もふえ、構造が異常であった。この異常は、9-10日投与で最も顕著であった。今後この異常の発生に関与する遺伝子群を調べていく。
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