研究概要 |
胎生後期(E16-21)のラット摘出脳幹-脊髄標本を用いて,呼吸中枢の発達を主に神経生理学的に解析した.[1]第4頚髄前根(C4)からの呼吸性神経活動は,発達にともなう頻度の上昇,amplitudeの増大などに加えて,そのバーストパターンも大きく変化した.つまりE19-20を境に,吸息相がそれまでの短い第一相のみ(胎児型)から,それに第二相が加わって,持続時間が数倍に延長した(新生児型).後者の標本(E20-21,一部のE19)では,新生児ラットと同様の呼吸性ニューロンのサブタイプ(前吸息性,吸息性,呼息性)が延髄腹外側部で記録された.一方,この様なサブタイプはE18以前の標本では明確ではなかった.胎生期の呼吸性ニューロンは,多くが内因性バースト形成能を有し,基本的に吸息性ニューロンと吸息相に抑制を受けるニューロンに分けられた.[2]アミン類(adrenaline,5-HT,dopamine),cAMP関連物質(forskolin,PACAP)などは,胎児型C4吸息性バーストの持続時間の延長を引き起こし,神経回路特性を胎児型から新生児型へと可逆的に変えた.タイプI吸息性ニューロンの原型はE17から見られ,内因性バースト及び非バーストタイプがあった.タイプIII吸息性ニューロンの原型は前吸息相で発火するタイプで,内因性バースト形成能を示した.前吸息性(Pre-I)ニューロンの原型として,C4吸息性活動発生時に抑制を受ける,内因性バーストタイプのニューロンが考えられた.[3]胎生期における延髄呼吸性ニューロンのCl-依存性シナプス電位は,E16においても過分極性のものが見られ,低Cl-(4mM)電極を使用すると過分極性IPSPの大きさはより増大した.GABA(0.2-1mM)の潅流投与は,高または低Cl-gramicidin記録時,胎児呼吸性ニューロン(E16-E20)に主に脱分極を引き起こした.低Cl-ホールセル記録(E16-El9)でも,GABAは74%のニューロンに膜の脱分極を引き起こした.多くの場合,GABA作用時には,膜抵抗の顕著な減少と膜興奮性の消失が見られた.GABA(0.5-1mM)の効果は100μMのbicucullineでブロックされた.GABA投与によって引き起こされる脱分極は,CO2/HCO3-freeのHEPESバッファー中では30-40%減弱された.
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